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チュンチュン…
「…ん……」
彼人は鳥のさえずりに目を覚ました。時計を見ると7時36分だった。彼人は昨日夕食を抜いたからか、お腹がぺこぺこだ。身支度を済ませ、一階に降りるとすでに母がいて、朝食を作っていた。
母は彼人に気づくと「あら、おはよう。早いのね」と声をかけた。
「朝ご飯、もうすぐできるからね」
目玉焼きを皿に移しながら言う。
「うん。……父さんは?」
「ん~?もうすぐ起きてくるんじゃない?今日明日仕事休みだし」
「……めずらし」
噂をすれば、2階から眠そうに目を擦りながら父が降りてきた。
「……ん…。お、彼人か。母さんも。おはよう」
「おはよう」
父と彼人はいつもの場所に座った。
「朝ご飯、できたわよ。食べましょう」
母が食卓に皿やら醤油やらを並べていく。
「「「いただきます」」」
今日のメニューはごはん、目玉焼き、野菜炒め、みそ汁だ。
「父さん、仕事休みなんて珍しいな」
「ああ、上司にな、たまには休め、と言われてしまったんだ」
父が上司の真似をして言う。
「そうよ、あなた。このところずっと働きっぱなしなんだもの。たまには休まなきゃ」
「そうだな!たまには、な!」
母が心配そうに言うと、父は笑った。
「あ、父さん醤油取って」
「ああ。………醤油?何に使うんだ?」
彼人が何気なく醤油を取って欲しい、と言うと、父は怪訝な顔になった。
「え?目玉焼きだけど」
彼人は彼人できょとんとした顔になる。
不思議に思って母の方をちらりと見ると、母は『あちゃー』という顔をしていた。
「………?」
おそるおそる、父を見る。
「……目玉焼きには、ソースだろうがー!!」
「……はあぁ!?」
彼人は目が点になった。
父と彼人は好みが違うことが多いので、よく喧嘩になるのだ。まあ、ことの始まりはいつも父なのだが……。
「目玉焼きはソースが相場と決まっているんだ!!」
「いやいやいや決まってねぇから!人の好みだろがそんなの!!つーか俺は醤油派だし!」
「ソースだっ!」
「醤油に決まってんだろ!!」
「ソースだぁぁ!!」
───………
結局、ソース派か醤油派か、というくだらない喧嘩は、母の「……いい加減にしなさい!!ごはん冷めちゃうでしょ!!」の一言で終わった。
久々の家族揃っての朝食は、とても賑やかだった。
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