A Prelude

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子供が雪に足を取られた。 すぐ隣にあるいていたオズは咄嗟に右手を差し出しかけたが、結局は子供が倒れるがままに任せた。 かわりに強い風にばたついている眼帯の紐を押さえ、その風が吹いていく先へと視線を向けた。 雪原の風に行き先はない。 二人が残してきた足跡をすっかり吹き消したり、莫大な白色の画布に美しい波模様を描いたり、強い陽射しで白銀色に輝く粉雪を空へ舞い上げたりしながら、その力が続く限りどこまでも自由に駆けていくだけだ。 一方で、二人にとっての目的地はもうすぐそこまで迫っていた。 今駆け抜けていった風の先、一面の雪と岩の大地の間に黒く細い紐のようなものが延びている。 あの紐をたどった先にある。 だが……… 視線を戻すと、子供がちょうど頭を上げたところだった。 「オズ。」 雪まみれで子供が睨む。 「今助けようとしかけてやめただろ。」 「目的地に着くまで一切手を貸さない。そういう約束だったはずだ。」 「だからってわざわざ出しかけた手をひっこめなくてもいいじゃないか。そういうのはただの意地悪っていうんだ。口に雪が入っちまったよ、まったくもう。」 「それなら、引き返すか?」
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