A Prelude

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「またそれかよ。ホントしつこいよなぁ~、オズは。ここまで来て引き返すかわけないだろ。」 子供はうんざりしたように答えて立ち上がった。 口に入った雪を吐き出しながら、その雪焼けした顔をしかめている。 どうやら少し口の中で溶けた雪を飲んでしまったらしい。 口直しにと水筒を取り出すが、すでに空っぽになっている自分の水筒を何度か振ってから、その灰色の瞳が物欲しげにオズの腰の水筒へと向けられた。 しかし結局何も言わずに大きな荷物を背負い直すと、頭や身体に被った雪を払い落とすことさえしないで歩き始める。 その様に、思わずオズの口元がほころんだ。 旅の間、子供はずっとこんな調子だった。 弱りかけているところを垣間見せても、すぐに自分はまったく平気なんだということを示そうとして何でもない風を装う。 たいしたものだった。 もっともそんな本人の思いとは別に、その全身からにじみ出る疲労の色は隠しきれなくなっている。 その息づかいや雪を踏みしめる足音はもうとっくに限界だということを告げていたし、髪は寒気に吹く風にさらされてボサボサ、肌はあまりの寒さに青白く、元々痩せ気味だった顔や身体はこの雪原越えの間にさらに肉が落ちて病人じみて見えるほどだ。
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