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夜。その町は、暗黒の闇に包まれる。
振り返り見上げれば、人間の上流階級のものたちが住まう塔が見える。虚飾の光で照らし出された、この街を統べる者たちの、宴の場が。
一方、周囲はこの街の中でも、もっとも死を連想させる場所。いや、ここに横たわるそれらに『死』という概念が当てはまるのかどうか、わからないが。
街で多くの人間に使役される機械――――自動人形(オートマトン)。ここは、それの廃棄場。累々と横たわるそれらはすでに壊れ、風雨に晒されて見る影もなく朽ち果てている。
この街、『ソドム』では、機械は消耗品だ。人間の代わりに働き、戦い、朽ちて行く。そして最期に行き着くのが、この廃棄場(スクラップヤード)だ。
そこを歩く少女は、ふ、とその光景にかすかに瞳を曇らせた。
深い紺色の髪をうなじまで伸ばした少女。その瞳も同色で、まるで深い水底のように置くまでは見通せない。同じく紺色の、メイドが着るようなロングのドレスを身にまとっているが、そのどれもがこの場所に似つかわしいとはとても言えなかった。
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