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「――――ごめんなさい」
不意に、少女が声を発する。抑揚のない、どこかなにかを押し殺したような声で、周囲の瓦礫の山に一人ごちた。
「あなたたちの眠る場所を、少しだけ、騒がしくします」
そしてゆっくりと――――自らが歩いてきた方向を振り返る。
そこには、夜の闇から溶け出したかのように、ゆっくりとこちらへ歩く、二人の黒服の男の姿があった。その手には、それぞれつや消しをかけたナイフが握られている。
「……気づいていたか。なんのつもりか知らないが、自分から人気のないところに来てくれて助かったぜェ。スクラップドの連中に気づかれるなって、上がうるさくてねェ」
舌なめずりをしながら、下卑た笑いを浮かべて男のうちの一人が歩み寄る。
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