再びあいまみえるは王子とオタク

9/27
18443人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
 ・・・結局皆、流されるがままにココロと臨也に着いていき城の設備の一つであるリングにいる。  広い広い、庭園のような雰囲気の中には似つかないところにそれはあった。石材でできた立派なものであり、闘技場と言っても差支えはないだろう。その中、ココロと臨也は向かいあっていた。 「さぁ、準備はいいな」 「やっぱ延期しね? 三年後あたりにでもやろうぜ」 「やるわけないだろ!!!」  ココロは拳を握り締め、青筋を浮かべる。臨也はいざリングに立つとビビリにビビっていたのだがそんな気持ちココロに届くはずもなく。 「ふざけやがって・・・。試合、開始だぁ!!!!」 「ぶるぉ!?」  我慢の限界とでもいうように、ココロは始まりを大声で叫んだ。  それとほぼ同時にだった。まずは小手調べで、身体強化を使った。そして、ものの数秒で間合いを詰めると臨也の横っ腹に重い一撃の蹴りが炸裂する。  常人の臨也は、当然吹き飛ばされてしまう。 (いってェなあんの野郎!? 美咲くらいの威力じゃねぇか化け物!)  その一撃をもらった臨也は、かつて自分のいた世界。今いる世界など考えたこともない時にいたクラスメイトの少女を思い出す。何が凄いって常人のはずの美咲のパワーなのだが。 「・・・?」  そしてココロは疑問を感じていた。それは、臨也に何かしらを感じたからではない。何も感じなかったかれである。  己の身体強化は、それほど上手でもない。ココロは雷という属性の魔法しか使えぬが、その雷の力一つで英雄と言われるまで上り詰めた。つまり、本来はその雷を主体に遠距離で使う。無論、電気である以上人体にプラスの働きをもたらすが、本質はそこではない。  故に、そこそこの手練である以上。今の二人の間合いの距離と、ココロの迫る時間があれば己に身体強化をかけるくらいわけないはずなのだ。  だからこそ考える。 (・・・身体強化にすら魔力を回さず、一発逆転の何かを狙っているのか?)  相手は未知数な以上、慎重になるに越したことはない。  だが、今のその相手のザマがだ。 「あ~、これ折れたわ。漫画のお約束の如くアバラが何本かイッちまってるわ。っべぇ~」  脇腹を抑えわざとらしくそう言っていた。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!