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「・・・黒髪、そう黒髪。あの野郎、いくらなんでも畜生――」
「あ、あの」
これは、何か思っている以上に大きい問題なのだろうか?
と疑問を思っていると男性は顔を上げた。二人はその表情を知っていた。
「聞いてくれるかい、嬢ちゃん達。アイツのことを!?」
「え、えぇ」
「はい」
あぁ、これは酒の席等で見られる愚痴る大人だ。
「・・・まぁ、最初に言っておくとそもそものこの菓子はその黒髪のアイデアらしくてな」
「そうなんですか!?」
ただ単に、意外と思った。そしてその時点で二人からはその黒髪が魔王という可能性は消えた。明らかに場違いだ。
「あぁ。初めてアイデアと持ち出されたのはこの国のある令嬢様・・・。まぁ、貴族なんだが。どういう繋がりかは知らねぇが、あの黒髪はそのお嬢様にこの菓子のことを言ったことがきっかけらしい」
どんどんと出てくる情報は興味を引き付けられる。
「で、まぁその味を知っているのが黒髪らしいってんで完成品を食わせたんだ。そしたら・・・」
「そしたら?」
「あの野郎は・・・!」
男性は語った。その時を起こった事を細かく。
『へへ、どうだ! 俺だって料理人の端くれなんだ、菓子とはいえいい出来のはずだぜ?』
『ふむ・・・』
その黒髪は渡された綿飴を受け取りマジマジと見つめる。
まるで審査のようなその瞳に、つい男性は緊張というものをしてしまった。
そして、黒髪はゆっくりと綿飴を口に運び、優しく噛んだ。
黒髪は感じた。舌に絡んだと思ったら既に甘く溶けている、懐かしい感覚を。目を瞑り思い出すようにゆっくりと舌を転がすと、飲み込んだ。
男性はどきどきしながら尋ねる。
『ど、どうだ・・・?』
黒髪は優しい笑みを浮かべた。男性は確信した。これは、満足した笑みだと!
そして、黒髪は口を開いた。
『いや、俺甘いの嫌いだし俺に聞かれても・・・』
『え? 今なんて、あぁ!?』
『急にお嬢に言われたから来たけど、なんで綿飴の試食? 俺甘いの嫌いだよ?』
『お嬢様がお前しか味がわからねぇっつーからだよ!』
『いやぁ、そもそも祭りとかあんま行かないからぶっちゃけそこまで食ったことないし・・・』
『知るか!』
『あ、綿飴としては大成功だよ。おらもっと喜べよ』
『それを先に言えやァァァ!!!!』
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