彼女はその頃

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「ここが、その屋敷ですか・・・」 「相変わらず貴族の家って大きい・・・」  それをもし一言で言うのなら豪邸。  しかし、それは平民が考えうる豪邸という概念を覆すような敷地面積と豪華さがあった。国のど真ん中に独占するように存在するそれは、貴族の傲慢さを表しているようにも見えてしまう。 「えっと、ここが・・・玄関?」 「玄関はまだでしょうね」  扉は一直線先に見えており、それまでは細いレンガ道が続いている。  とにかく対面するために一歩敷地に入ると、人影が二つあった。  外からは見えなかったため、少し驚くがその二人は一発で素性がわかる外見をしていた。明らかな若いお嬢様と、年老いた紳士の執事である。  お嬢様の方は何か息が荒かった。 「あ、あああの人は・・・! 何故追放したにも関わらずこう何度も・・・!」 「お嬢様。彼はただ通りがかっただけです。そこへ理不尽のような当たりをしたのはお嬢様の方で・・・」 「お黙りなさい! アイツだけは、こう、何かムカつくのよ!!」  ギャーギャーと喚くその姿は、立派なお嬢様よりも年相応の女の子に感じられた。  二人が歩み寄ると気づいたお嬢様は、恥ずかしそうに顔を赤らめると服を適当に整え咳払いをする。すると、隣の執事が対応した。 「こんにちは、可憐な方達。只今当主である旦那様はいらっしゃらないのでご用がおありでしたら私が承りますが」 「突然の訪問申し訳ありません。私たちは、そこのお嬢様を訪ねに来ました」 「わ、私(わたくし)に・・・?」  シェリアは言葉遣いは丁寧にするものの、決して跪くことはなく言った。  それは、彼女自身の過去が原因なのだろうか。 「・・・なんのご用ですかな? 見たところ、貴方がたは召喚士と剣士。そう簡単にはお屋敷に招き入れるわけにもいきません」  執事は警戒するようにシェリア達を見下した。  アイリスはシェリアの静かな態度が癇に触るのでは、と考え笑顔で接する。 「す、すみません! アタシ達は怪しい者ではなくて・・・。あ、自己紹介します! アタシはアイリスです。そしてこっちがシェリア――」  拙い言葉遣いで言っていると、そこでお嬢様が異様に食いついた。 「い、いいい今アイリスと申しました!? そ、それにシェリアってもしかして・・・」
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