彼女はその頃

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 アイリスの肩を掴み、揺さぶりながら尋ねる。  もはや貴族という振る舞いなどなく、ひたすらに興奮している状態だ。 「は、はい。そうですけど・・・」  ガックンガックン揺らされ目がまわってしまう、とアイリスが感じ始めたところでお嬢様は気づき手を離した。 「あぁ、私としたことが申し訳ありません・・・! と、ところで貴方がたはもしかして英雄なのでは・・・」  平静を装おうとしているが、声は上ずっており視線もチラチラと動いている。質問にシェリアは特に何も思わずに一言で答えた。 「はい」 「や、やっぱりそうですのね!? あぁ、聞いたとおりの特徴ですわ!! 爺、早くこの方々を案内さしてあげて!!! 後お泊りになる部屋は最上級の場所が・・・」 「ちょ、ちょっと待ってください! アタシ達はちょっとお話を伺いに来ただけなので泊まるとかは・・・」  勝手に話を進めるお嬢様にアイリスが必死で食らいつく。  お嬢様は非常に残念そうに顔を歪める。 「では、立ち話もなんですし案内いたしますわ。爺、貴方はお茶のご用意を、私がご案内します。あ、最高級の物でおもてなすのよ!」 「かしこまりました」  お嬢様の命令を受けると、執事はすぐさま移動を開始した。  一方お嬢様は、英雄ともっと接しなければ! と思い自らが案内すると提案する始末。  二人としては急いでもいないのでお邪魔させてくれるというのなら断る理由もない。なのでそこには甘えることにする。 「では、ご案内しますわ!」  お嬢様が歩くと、その一歩後ろを二人は歩く。  二人は随分賑やかな貴族だな、と同じことを思っていた。  移動中の第一声はお嬢様だった。 「ところで、なぜ私に・・・? 触りだけでもお伺いしてもよろしいでしょうか」 「えぇ。貴女が黒髪の人と関わりがあると聞いたので訪ねたのですが」  シェリアが答えると、お嬢様の雰囲気が少し変わった。体が少し硬直したように感じられた。 「あ、貴方がたがあんな奴とお知り合いなのですか!? 騙されてますわよ!」  歩くのを止め、振り返り言った。  なぜそこまで突っ掛るのか二人は気がかりだった。
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