彼女はその頃

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「あ、あんなゴミを人の形で表したかのような奴とお知り合いだなんて・・・」 「あの、何かあったのですか? その黒髪の人と」  シェリアは可能な限りの情報を求める。  顔には決して出さないが、内心はかなり期待と急ぎで満ちている。  そのせいか、つい続いて口を開いた。 「もしかして、その黒髪はソノザキ・リンヤという名では・・・」  期待に溢れ、鼓動がいつもより激しく打つのを感じながらその名を口に出し反応を伺う。もし、黒髪が探し人であるソノザキならば・・・。  だがそんな思いを簡単に裏切るように、お嬢様は疑問符を浮かべた。 「いえ、そのような名は聞いたことが・・・」 「そう、ですか・・・」  アイリスは少し心配そうにシェリアを覗く。  表情は変わらないが、明らかな落胆の声色を一瞬出した。 「え、えっと。シェリア様とアイリス様はあのゴミをお探しになっておるのですか?」 「あはは、様なんていらないですよー。ところで、なんでゴミ呼ばわりするの?」  アイリスが気さくに話しかけながら聞き返す。  お嬢様は間髪いれずに、無感情の中に僅かな怒りを帯びたかのような矛盾した声で言った。 「女の敵ですわ」 「あ、そうですか・・・」  何が彼女をここまでにさせるんだろう、という疑問を二人が浮かべるといつの間にか目的地へと到着したようだ。 「こちらですわ。一応VIPルームなので、窮屈はないかと」 「わざわざそんなところじゃなくてもいいのに」 「英雄様方にそんな事させるわけにいきませんわ!」  そんなやり取りをして、二つ扉の取っ手を押して開く。  中の部屋は貴族の最上級部屋と呼ぶにふさわしい造りになっており、触るのも躊躇うようなオブジェなどがたくさんある。  しかし、広さはさほどなく少人数で寛げる造りだ。と言っても10人程度は収まるが。 「どうぞ、おかけになってください」  お嬢様に促されるままに着席する。  これまた高級な長机だ。シェリアとアイリスは並んで、向かいにお嬢様が座る。  それと同時に先に来ていた執事がお茶菓子を用意する。  カップに注がれた香り豊かな紅茶は一息つかせてしまう。
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