彼女はその頃

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(うわ、美味し! ココロの所で出される物くらいかも・・・)  口にした紅茶についそんな感想まで思ってしまう。  先に切り出したのはお嬢様だ 「それで、私に尋ねたいこととはあのゴミ・・・。失礼、淑女たる私が。黒髪の彼についてのみでよろしいのですか?」 「はい」  もう手遅れだよ、という突っ込みは心の中でだけにしとく。 「それについては私より、爺の方が詳しいかと。元教育係でしたので」 「? それは、彼はここで働いていたということですか?」 「はい。今から、およそ二年前です。路頭に彷徨う彼を私が拾ったのです。それが運の尽き・・・」  遠い目をするお嬢様に二人はつい苦笑してしまう。 「お嬢様、彼は悪気があってあのような行為に及んだのでは・・・」 「・・・爺、貴方はいつも彼を庇護しますわね。もしかして、貴方もグルなんですか」 「め、め滅相もございません」  執事はお嬢様に睨まれると、すぐに否定したが明らかに動揺した。  お嬢様は知ってか知らずかそれには追求しなかった。 「・・・彼の名を教えてください」  この際お嬢様の事情など知ったことではない。  シェリアは名前が違えど、黒髪についての情報は求める。  そもそも、黒髪の"彼"がソノザキであることはまだありえる。名が違うと言っても偽名を使っている可能性もあるのだから。  この国を訪れたばっかりでこんなにも二年前の関係性が出てくる。  明らかに"臭い"のだ。 「彼はアラン・パンドラム。そう名乗っておりました」  シェリアの問いには執事が答えた。  アラン。それが黒髪の名。 「ここがあの綿飴というお菓子の根源だと聞きました」 「なるほど、それであのゴミクズについて・・・」  もはやお嬢様はお嬢様を捨てた。  その後、シェリアが尋ねた質問から大体は掴めた。  およそ二年前、アランを拾ったお嬢様は経緯を訊く。すると、どうやら放浪の旅に出ていたようだ。幼い時よりそうしており、出身についても記憶しておらず。  しかし、お嬢様の知らない知識。例えがあの綿飴であり、その奇抜な発想を気に入りしばらく世話したそうだが。 「忌々しいアラン・・・」 「お嬢様、お気を確かに」  何かがあったようで、ついには追い出したそうだ。
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