彼女はその頃

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「・・・なるほど、大体わかりました。ありがとうございます。アイリス行きますよ」 「えっ、もう行くの!?」 「えっ、もう行かれるのですか!?」  シェリアが立ち上がる。  黙々と出されたケーキを延々食べてたアイリスと、これからは英雄についてもっと聞こうと思ってたお嬢様が驚きの声をあげる。 「はい。この国にアランがいるのなら探してみようかと」  お嬢様が言ったこと。追い出されたアランは、どうやらこの国で暮らし続けているようだ。あちこちで噂の種になっており、暮らしているのは間違いない。  というより、今日さきほどこの屋敷に訪れたようだ。具体的にはただ通りがかったのをお嬢様が一方的に当たるだけのものだったようだが。  それを聞いたシェリアは、悔しかった。タッチの差で行き違いをし、流石に驚愕しかできなかった。 「で、でしたら是非とも私の屋敷に宿泊を! 国は広いですし・・・」 「すみません、既に宿を手配しているので」 「そんな・・・。で、でしたら少しだけお話を! そこまでお時間は取らせません!」 「いいじゃんシェリア。時間はまだまだあるんだし」 「・・・わかりました」  ケーキを頬張るアイリスにそう言われる。  不服そうだが尋ねたのだから礼、とまではいかないまでもある程度の質問には答えるか、と思い再び着席する。 「あ、ありがとうございます!」  ぱぁ、と明るい笑顔を見せるお嬢様。それを見るとシェリアもつい一緒に笑ってしまう。 「で、ではではまず勇者ライクス様についてですね・・・」  そう会話をするお嬢様を見て、二人はちょっとだけココロの妹ソフィーに似ているなと思った。 「では、これで失礼します」 「はい! 貴重なお話ありがとうございました! また是非いらしてくださいな!」 「ばいばーい」  お嬢様自らに見送られ、二人は屋敷を後にした。  小一時間程度で話しは終わった。主に魔王を倒す旅について聞かれており、お嬢様は常に興奮していた。 「んー、で。どうする?」 「まずは宿に戻りましょう。服を着替えたいです」 「ん、そう言えば着替え忘れてたね」  後数時間で夕刻になるが、比較的治安もよく何より強い二人は夜に行動することにも抵抗はなかった。
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