18459人が本棚に入れています
本棚に追加
周りが木々で囲まれている森。
日はまだ出ているが、日陰が多い。故に薄暗くかつ肌寒い。
幸いなのは歩きやすい平地になっていることだろう。
「・・・服装を間違えましたね」
「あはは、それだとちょっと寒いよね」
スカートはともかくとして、上半身も薄いのは間違いだった。半袖ではないものの、薄い作りのそれは思わず腕をさすってしまう。
「で、ここが結界の座標だよね」
「えぇ」
二人がそう言う目の前には、なにもない。視線の先にも森の続きがあるだけ、腕を差し出しても空をかするだけ。
だが二人はこの地点からループ現象が起きていると確信していた。
「どうやって突破しようか」
「召喚すればどうにかなります、問題ありません」
剣士のアイリスでどうこうできる結界ではなかった。
しかし、召喚士のシェリアは違う。多種多様の生物を使役できる最強の戦士。シェリア程の使い手ならば、結界を破るのもさほど苦労はない。
しかし。
「壊しちゃったら怒られない? これ張り直すって相当苦労するよ?」
「・・・謝りましょう」
「なんか投げやりじゃない?」
「ですが――」
それ以外に方法は、と続けようとした時だった。
誰かが近づいてくる。声が、聞こえる。
「あんのなんちゃってお嬢様め・・・。美少女でなければ激おこになる程の暴行だ」
二人は最低限の警戒を怠らず、それを待つ。それは丁度よく二人の所へ向かっていた。
影がどんどん近づき、鮮明になっていく。二人は見た。異形を。
真っ黒な髪の毛。それ以外は、特徴などなく普通と表すのが適切と言える。身長も、体格も、顔も普通なそれは近づくと気づいた。
「へい、そこのお二人。ここには何もないから帰ったほう、が・・・!?」
黒髪は、二人の顔を見ると確実に固まった。
驚き、焦燥。急速に何かがこみ上げてきた。だが、それは黒髪だけではない。
(えっ・・・)
シェリアは、確実に鼓動が高まった。
――ドクン、と。わからない何かが渦巻く。声を出そうにも唇が震える。
先に口を開いたのは"アラン"という黒髪だった。
アランは、静かに。そしてその中に明らかな敵意を含めて発言する。
「・・・何だテメェら」
だがそれは。
探し人の園崎臨也であることはまだ知らない。
最初のコメントを投稿しよう!