自称凱旋

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 互いに目線が合う。しかし、アラン――もとい臨也は睨んだまま。  明らかにフレンドリーな視線を向けない臨也にアイリスは多少気に食わないと感じながらも、口を開く。 「えっと、君はアランくん、だよね? 初めまして、アタシはアイリス。そして・・・」  アイリスは続けて紹介させようと、シェリアを見る。  が、シェリアは口を開くことはなくただただ、臨也を見つめるだけだった。  それを見たアイリスは慌てて続ける。 「こ、こっちがシェリア! よろしく!」 「・・・ふん、誰かと思えばあの英雄様かよ。ご丁寧に俺の名まで調べるとはな」 「えっと、ごめんなさ・・・」 「いいよ、謝んなくて。それで何のようだ。オッサンか? オッサンだよな、そうだよな。よし、ならついて来い案内してやる」  一方的に、二人の発言を許すことなく臨也は推し進める。  そこでやっとシェリアは我に帰ったようで、臨也に話しかける。 「あ、その。ついて来いって・・・」 「オッサンに用があるんだろ?」  そう言いながら、臨也はポケットから金の光沢を放つ鍵を取り出した。  それを空に挿し、さもそこに扉があるように鍵を捻る。  瞬間、音もなく先ほどまでなかった景色が目の前に続いた。  まず、鬱陶しい木々がなくなっていた。草原のような浅い草が続いており、真ん中には透き通るような湖があった。  これが本来のここの姿なのだろう。綺麗な秘密の場所のようなそこは、つい見惚れてしまった。  そこで相変わらずぶっきらぼうな声色で臨也が喋る。 「早く来い」  ただ、それだけ。  二人は黙ってそれに従うしかなかった。  我に帰ったシェリアが感じたことは、二つ。  不快と、不審。  明らかに自分たちを突っぱねるような態度。それに、今まで話しに聞いたような人柄ではない、と考えたがあの貴族は随分と嫌っている様子だった。これが、アランという人間性なのか。だとすればだ。  シェリアは、この人を大切だとは思えない。  そんな何者か知れぬ背中を見つめるシェリア。一方で、その背中の持ち主もあらゆる思考をしていた。 (な、なななななんでコイツ等がここに居んだ!? つ、つい招いちまったけどなんで招いたんだ!? スカートの絶対領域のせいか!? それだ!!!)  もはや、パンク寸前であるが。
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