自称凱旋

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 この臨也という男。シェリア達は臨也のことを一切覚えていないが。  臨也はこれまでのことを全て覚えいる。  それ故に、焦りを隠せない。何故記憶をなくした彼女達がここにいるのか。全く理解できずに、意味がわからない。  だが、自分のやるべきことなど決まっている。この場を凌ぎ、帰すだけだ。 (幸い、奴らはイケメンである俺こと臨也を知らない。なぁに、落ち着いて対処すれば難なく・・・) 「あの。私たちはソノザキ・リンヤという人を探しているのですがご存知ありませんか?」 (うぇひひひひひひ、マジかコイツ等)  一歩後ろにシェリア達がいるということが幸いしただろう。  今の臨也の表情は歪みに歪みまくっている。 「は、はぁ? そんな名前知らないけど? そんなDQNネーム一度聞いたら忘れるわけねーけど? そもそもそんな名前いるのかっていう?」 「すみません、早口すぎてちょっと・・・」 「くっ・・・!」 (あれ・・・?)  そんな臨也とシェリアの会話を見て、アイリスはゾクリ、と腹部に何かを感じ思った。  こんなことが以前にもなかったか? と。  しかし、生憎そんな記憶持ち合わせていない。気のせいかとすぐに切り替える。 「それで、どこに行くの?」 「オッサンとこ。どーせアンタ等ドワーフに会いに来たんだろ? 俺が住んでるところだから」 「貴方もドワーフなの?」 「まさか。俺は居候してるだけだ、っと着いたぞ」  湖のすぐ傍に、それはあった。  木造でできた一軒家、と言えば聞こえはいいが家、というよりは小屋のイメージが強い。  それでも、暮らす分には申し分のないスペースなのだろうが。  臨也は取っ手に手をかけ、動かない。不審に思った二人は声をかける。 「? どうしたの?」 「早くしてください」 「黙れ! それが初対面の態度か!」 「貴方の方が失礼なので」 「くっ・・・!」  そう言い合う臨也の内心は、相当焦っていた。今ここではシェリア達は問題ではない。問題なのは、この後。 (オッサン、頼むぞ・・・。これは俺の人生の分岐点なのだ)  ふぅー、と一息吐くと覚悟を決めた表情を作り、そして。  扉を開けた。
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