自称凱旋

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「ハハ、お前がいないと寂しくなるな」 「老いぼれの世話は苦労したぜ・・・」 「ぶっ飛ばすぞ」  こういうやりとりも、日常的にすることはもうない。ボルゼは笑っているが、その瞳の奥は少しの悲しみが写っていた。 「さて、俺は荷物も特にないしな。行くか?」 「・・・もう、いいんですか?」  最後の別れだ。シェリアはあっさりと発とうとする臨也に確認をとる。 「構わねぇよ。夜中に散々騒いだしな」 「ハハ! ちげぇねぇ」  顔を見合わせ笑い合う。ただそれだけで。  互いに別れる覚悟が決まった。 「・・・では、結界の外に転移するための魔法陣を用意しています。行きましょう」  シェリアがそう言うと、アイリスも立ち上がる。そのままゆっくりと全員外へ行き。 「お邪魔になりました」 「ボルゼさん、じゃあね!」 「あぁ」  頭を下げるシェリアと元気に手を振るアイリス。  そして。 「じゃあなオッサン。俺という労力が減るからって無理すんなよ?」 「だからお前サボってたろうが」 「ふぇぇ・・・」  臨也を見上げ、そんな会話を交わすボルゼ。この男にしんみりとした別れなど不要だ。 「・・・んじゃ」  ふぇぇ、と言っていた表情を変える。そして、たった一言。 「行ってくるわ」 「気ィつけろよ」  それだけで、別れはすんだ。  臨也はボルゼに背を向け、歩き出す。二人もそれに続き、最後にボルゼに軽く会釈をして去る。  小さなボルゼは、それを笑顔で見送る。最後まで、その背中が完全に視界から消えるまで笑顔を保ち。  今まで一緒にいたその背中が、いなくなった。  ふぅ、と一息吐くと空を見上げる。眩しいポカポカとした日差し。旅立ちには上等な天気だった。出会った時と比べ、少しだけ大人になった彼を見送ったことを実感したボルゼは。 「・・・さぁて、一仕事しますか」  彼に感化されたかのように、いつも通りを過ごすのだった。
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