彼女はその頃

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 この世には、英雄と呼ばれる者達がいる。  合計で6人のその英雄達はとにかく若かった。全員二十歳にも満たない世間では子供と言われる年齢。  しかし、他を寄せ付けないまでの圧倒的な才は魔族との抗争を終わらせるほどまでの絶大な力だった。故に、子供でありながら認められるのはもはや必然と言わざるを得ない。  英雄達は二度世界を救っている。一度は魔族の王の撃破。そして二度目はそんな王を嘲笑うかのような常軌を逸した力そのもの。二度目は戦争と呼ばれるものもなく、裏舞台でいつの間にか解決されていたものが表舞台に知れ渡った。  だが違う。二度目の異物と呼ばれたその力。世間は英雄により救われたと認識しているが、本当はたった一人の少年によりものだった。その命を賭して救われた世界は、一人も少年を記憶することはなかった。そのように、少年自身が仕向けたのだ。  しかし、ほんの些細なことがきっかけで。  英雄と呼ばれる者達はその少年を探す旅に出ていた。  世界が救われてから二年もの月日が経っていた、とある昼下がりである。 「シェ~リ~ア~。アタシ疲れたんだけど~」 「なら、もう少し歩いたら休憩しますか?」 「それってどのくらい?」 「五キロ程ですかね」 「げぇ~・・・」  歩いていたのは、女性が二人だった。その二人は親友という間柄。  一人は雪のような真っ白い髪。腰まで伸びており、顔立ちも整っている。スタイルも抜群なその女性はアイリスと呼ばれていた。腰に携えた太刀に似た刀身の剣を携えている。彼女は剣技においては最強と言われていた。  そして。  もう一人の女性は。 「・・・わかりました。今小休憩とりましょう」 「やった大好き!」  シェリア・ライト。この世に少数しか存在しない召喚士と呼ばれる者の一人。一メートル程の杖を背中に背負っていた。可憐な少女にはやや不格好にも思うかもしれないが、それは不思議と似合っていた。  透き通る美しい水色の髪の毛は、二年前と比べると少し伸びていた。当時から比べると多少は大人っぽい印象になっており、クールなその目と雰囲気は他を魅了するには十分すぎた。  胸の方はご愛嬌である。 「次の街はどんなところかなぁ~」 「完全に旅行気分ですか・・・」
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