彼女はその頃

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 だがそれは無理もない話であった。  旅の元々の発端はシェリア。少年の記憶がなくなってからおよそ半年経った時であった。シェリアは、一人旅をすると言った。  他の者達は驚き、困惑し、疑問を浮かべた。なぜ今更旅に出ると言うのだ。ライクスという勇者を探す旅はとっくに終えた。全員は当然問いただした。すると、シェリアはなんてことなく答えた。 『待つのはもう飽きたので、逢いに行くことにしました』  少し笑顔で答えるその顔を見て、全員驚いた。  シェリアはここまで幸せそうな笑みを浮かべるものだったか? と。  そしてシェリアは言った。顔を姿も声も、何も思い出せぬが。  きっと自分にとって大切な人であろうその人のことを。  そうするともはや時間の問題だった。英雄と呼ばれる者達は、生半可な薄い繋がりではない。全員シェリアに協力するという形で学園を放っぽり、手分けする形で『ソノザキリンヤ』という名の者を探すことになった。  けども時間が経ちすぎたのかもしれない。皆、頭には置いているもののもはや旅行のようなお気楽の旅と化していた。  シェリアただ一人を除けば。 「それにしても一番許せないのはライクスとリナだよね! あの二人が一緒って・・・。がぁぁぁ!」 「いつまで言っているんですか・・・」  頭を抱えるアイリスを呆れるように見る。 「ま、それはそうとさ。ソノザキなんて人本当にいるのかな? 一年以上経つけどさっぱり情報ないし」 「・・・・・・・・・」  その言葉にシェリアは返せない。  正直な話、シェリア自身も半ば参っている状態だった。情報らしい情報なんて一つもない。どこかの賊のような者が言ったデマカセしかない。  それでも。諦めるわけにはいかなかった。  そもそもの異物というものを倒した時の記憶の矛盾。一時の時点からの記憶が決定的におかしい。  それらを確かめる意味でも、挫けるといのは論外だった。 「ま、シェリアの愛した人って言うのならアタシも頑張るけどさ」 「な、なな何を馬鹿なこと言ってんですか! くだらない!」 (・・・ホント、この『ソノザキ』って話題になると別人みたい)
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