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だが知らないというのなら仕方ない。これ以上追求できることもないので終わりにしようかと思ったら臨也が言葉を紡いだ。
軽く言い放つには重すぎる言葉を。
「俺が相手の魔力を何らかの手段で知ると、俺はソイツの魔力と魔法を自在に操れる。多分枯渇させることもな」
ビキッ、と氷にヒビが入ったかのような鈍い音が鳴った気がした。全員の脳を硬直させ、思考を放棄させる。今彼の言ったことが理解できない。理解したくない。
「だからココロの雷は俺の意思のままに操った。ま、詳しい理論や原理なんて知らんけどな。そんなのはどうでも――」
「リンヤ!!!!」
「んぁ?」
ライクスが叫ぶ。再び椅子にふんぞり返る彼を、睨むような慄いているような様々な感情が混ざった顔で迫る。それは、一言で言えば『恐い』顔だった。
「お前、その力の意味を理解してるのか?」
「ふぇ?」
「相手の魔力を操れるってことは――」
「その者の命を手玉に取っている、と?」
この時ライクスは。いや、ライクスだけではない。『ほぼ』全ての人間がこれまでの人生でも最大級に恐怖した。腕を足に置き、挑発するようにほくそ笑む彼は。おぞましいもの以外の何者でもなかった。
(それっぽい雰囲気に合わせてるだけなんだけどな!)
こんなやつに翻弄される英雄達に同情は隠せないであろう。
「・・・俺が今、お前に感じたことを言ってやる」
「僕はリンヤさんにならこの命、いくらでも預けられます!」
「ふっ、任せておけ」
「ココロ・・・」
全員思わずズッコケてしまいそうになるが、そこは何とか乗り切る。
半ばグダグダしつつあるがそう簡単に流せる話題でもなかった。
「俺はお前のことを危険だと思った」
「ほぉーん」
「俺らにはお前との記憶がない。さっき聞いた話は本当だろう、それは信じる。だがそれでも、俺達は『知らない』んだ」
「だから恐いって? 得体の知れない黒いイケメンオタクが目の前にいるという事態がお前らにとって」
「あ、あぁ」
あえて彼の言葉に誰も触れないのはきっと優しさなのだろう。
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