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ココロのいる国は世界でも有数の都の一つだ。休日ともあれば街は人で溢れ、大きな賑わいを見せる。商売をする者、無邪気に遊ぶ者、愛し合う者様々だ。
そんな中二人の青年が街を練り歩いていた。その二人は街を歩けば間違いなく注目されるであろう容姿をしていた。銀髪を揺らしながらしっかりとした風格で歩くその一人は勇者と呼ばれるライクス。
英雄が全てこの国に住んでいるというのは有名な話だが、国民であってもいざ直接出会うと興奮も高まってしまうもので。
「あ、あの! 私昔からファンでした! 握手してください!」
「は、はぁ」
可愛らしい学生と思われる女性からそうお願いされる。きっちりと応えているライクスだが、先ほどからこの調子で少々参っている様子だ。何も若い女性ばかりというわけではないが、その甘いマスクは当然のように女性を惹きつけてしまうのだ。
そして、そんな注目の的は一人ではなく。もう一人、横に並んで歩いているのが。
「ライクス様の横にいるのは一体誰・・・?」
「黒くて怪しいわ。きっと犯罪者よ」
「そういう話は本人に聞こえないようにしろゴルァ!!!!」
皆のサンドバッグ、園崎臨也である。周りの女性のそんな話を叫んで散らせる。
「ったく! わざわざライクスに付いて来てやったってのにこれだよ! 世知辛い世の中ですな!」
「連れてこられたの俺なんだが」
「そんな馬鹿な・・・」
「何故驚く」
そう、このとおり今街に出向いているのはライクスと臨也の二人だけだ。少し前、たまたま街で遭遇したところを臨也が無理やり同行させたのである。
臨也はココロの城に居候している身だが、他の者達は皆個別に生活していた。未だ全員の住処を把握していないのは臨也だけだ。かわいそうに。
「いやね、ぼっちのお前が可哀想だったからね? 俺が助けてあげたんだよ?」
「元々一人で出歩く予定だったんだが」
「ぼっちは皆そう言う」
「そうか・・・」
面倒くせぇ。この男とのやりとりはこの一言に尽きる。
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