オタクと勇者のマナー講座

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 幸いここは飲食店が連なっている通りだった。互いに何を食べたいなどを話しながら探していると、臨也がふと気になる看板を見つけた。 「なんだコレ?」  歩みを止め、看板を見つめる。その看板は淡々とした工夫のない文字だけの簡潔なものだった。ライクスは臨也の横に立ちその文字を読み上げた。 「『マナーが絶対のお店。最高の料理をお届けしますがマナーに反する行為の場合多額の料金を請求。我々が認める究極のマナーを披露したさいには無償で料理をお届け、さらにはお楽しみも・・・』って・・・。よくわからないな、ここは止め――」 「失礼しゃーす!」 「お、おい!」  長々と説明してあった看板。中身はイマイチ掴みにくいもので、胡散臭いのでライクスは別な店にしようとしたが、颯爽と臨也が店の扉を開け中に入っていった。  この建物、実は他の店とは一線を画す程度に一回り大きなサイズだった。外観も清潔感に溢れており、言うなれば高級なお店に見える。  ライクス自身は、手持ちが少ないわけじゃないので値段は気にしないが怪しい店は別問題だ。しかし臨也が入店してしまった以上、引き下がるわけにはいかない。ライクスは諦めると慌てて臨也を追いかける。 「お前、勝手に店に入るなよ」 「勇者様ならマナーも余裕だろ? 俺にレクチャーしつつで優雅なタダ飯といこうじゃないか」 「・・・待て、俺は――」 「いらっしゃいませ」  ライクスが何かを言いかけていると、店員が話しかけてきた。その店員は店員、というよりは執事のような品のある雰囲気だった。燕尾服も非常に似合っており、中々色気のある中年の男性だった。 「二人だ。案内したまえ」 「かしこまりました」  目茶苦茶偉そうに口出した臨也に眉一つ動かすことなく店員は一つ一つ丁寧に行動し、案内する。  それだけでもわかる完璧な動作にライクスは声を漏らしそうになるが、すぐに臨也へと意識が向く。 「お、おい。そんな態度で接したら・・・」 「ふっ、貴様の目は飾りかライクスよ」  店員の後ろを歩き、小声で会話する。何故か自信たっぷりの臨也にライクスは耳を傾けた。
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