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「お、あの店美味しそうじゃん。奢れよ勇者様」
「断る」
臨也が指差す店には目もくれずに歩んでいく。臨也自身特に期待していなかったので何も思っていないが。
「わかったよ。ナンパしよう」
「突然すぎないか?」
「お前がいればお姉さんだって攻略可能だ。大丈夫、俺が保証する」
「いらない保証だな」
今度は本気で言ってくる臨也だが当然応じない。とても目をギラギラさせているが絶対に応じない。
「ま、それはそうとさ。何の用事で街に来たんだ?」
「特に目的はない。ただ、久しぶりに戻ったから歩こうと思っただけさ」
「ふぅん。じゃあ互いに目的はないのか」
「そうなるな」
たまたま街中で出会った二人だが、これといった用事もなくただただ散歩しているだけの状態だった。それを苦痛だと思うことはまずないが、出会ってしまった以上何かしなくては、という気持ちも芽生えてくる。
そしてライクスは思い出したかのように、臨也に言うべきことを口に出した。
「・・・こうやって」
「んぁ?」
「こうやって平和に街を歩けるのも、リンヤのおかげなんだよな」
とても嬉しそうに微笑み、そう語りかけた。あの異物の目的が何かはわからなかったが断言できる。もし臨也がいなかったらこの世界は確実に終わっていたということを。だからこそ、今。
救われた者の一人として礼を言う。
「本当にありがとう」
「やっと自覚したか凡人め。もっと称えろ」
「あ、あぁ」
こんなお調子者だが。
「まぁそんなことはどうでもいい。とりあえず本当に腹が減った」
「朝食を食べてこなかったのか?」
「いや、ココロがもてなした最高の料理を食い尽くしたけども」
「お前・・・」
「もうすぐ昼時だぜ? 妥当な時間じゃないか」
「それもそうだな。どこかの店に入るか」
「ゴチになりまーす」
「・・・・・・」
びっくりするほど図々しい男だ。臨也が辺りを見回し、適当な店を探す。ライクスも腹の虫が鳴りそうだったので、手伝うような形で店を探す。
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