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「そういう春ちゃんこそ、これはいったいどういうことなのかなぁ?」
朱音は、部屋の床が見えなくなる程度に散乱した衣服やゴミの山を見てじっとりとした視線を向けてくる。
「掃除なら後でちゃんとやっとくから。ほら、帰った帰った」
「お じゃ ま し ま す!」
朱音は鼻息を荒くして強引に部屋の中へと入ってしまうと、IFを外してベッドの上に放り投げてから腕まくりをした。
「おい、掃除なんかいいって」
「いっつもそんなこといってるけど、春ちゃんが掃除してるの見たことないよっ。ほら、春ちゃんは邪魔だからしばらくベッドの上にでも座ってて」
こいつは言い出したら絶対にきかない。
俺はあきらめて、言われた通りにベッドの上で体育座りをする。
男の一人暮らしなんてみんなこんなもんだろう?
ほっといてくれよ。
なんていったら殴られそうだからやめておいた。
押しかけ妻は相変わらずのセーラー服姿で、相変わらずのハイテンションを振りまきながら鼻歌交じりに手を動かしている。
世界が崩壊して、学校に通う必要もなくなってしまったというのに、制服を着たがる奴は結構いるみたいだ。
きっと、改変前の世界を惜しんでいるんだろう。
こいつの場合はオシャレをするのが面倒だからだろうけど。
そもそも、朱音が着飾っているところなんて見たことがあっただろうか。
それらしい恰好をしている朱音の姿を思い浮かべてはみたが、なんだかすごく如何わしい想像をしている気がして、すぐにかき消した。
とはいえ、朱音は黙っていれば相当に可愛らしい。
いや、黙ったうえで、動かなければもっと可愛らしい。
正直、見た目だけで言えばなんの不満もない。
けれど、その本性を知っている身としては、どうにもそのヘビー級な愛情をまともに受け止めてやる気にはなれないのだ。
何より、こいつと付き合ったりしたら、あのめんどくさい親父さんが漏れなくついてくると思うと、なおさらだ。
「春ちゃん……。キミのIFがトイレで見つかった件について話し合いたいのですが……」
「おっ、そんなところにあったのか。サンキュ。―――なあ、朱音。親父さんまだみつからないのか?」
追撃を避けるためにも俺はそれらしい話題を急いで切り出す。
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