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間もなく日付が変わろうという頃。
大門と細山田は恵美の家の屋根裏で、灯りもなしに「作戦会議」を続けていた。
「それじゃあ、夜明け前に黄金騎士団の屯所へ向かい、ルシファー君たちを救出してから、混乱に乗じてギルド本部に潜入するってことで」
細山田が言うと、大門は蚊の羽ばたきほどの小さな声で「ああ」とだけ返事をし、膝元に寄り添うようにして眠っている滝山若葉を見つめていた。
ほんの30分ほど前まで、若葉は鼻息を荒くしながら子供なりの意見を懸命に語り、大門たちの言うことに必死で耳を傾けていた。
けれどやはり、疲れ切っていた心と体が休息を求め始めると、若葉の口数は自然と少なくなってゆく。
その身を案じた大門が少し眠るようにと促すが、傾きそうになる体に鞭を打って「大丈夫」と虚勢を張るものだから、細山田は「皆、30分だけ仮眠をとりましょう。目覚ましをかけておきます」と嘘をつき、我先にとタヌキ寝入りをして見せたのだった。
「でも、どうします? 黄金騎士団といえばギルド内最強の武闘派集団ですよ。いくら大門さんが強くったって……」
「戦う気はねえよ。昨日の夜みてえに、透明化させてくれりゃあ、あとは俺が潜って連れ出す」
「……透明化は万能じゃあないです。音や気配が消せるわけじゃないですし、効果ももって2分。その間に彼らを見つけられたとしても、IFは当然取り上げられているでしょうから、それも取り戻さないといけない。あちらが相当に油断していないと難しいですよ」
「わかってるよ。バレたときは……」
「そのときは彼らを見捨てて逃げてくださいね。私も外で待機しておきますが、騒動が起こったら逃げます」
「そうじゃねえ」
大門はそう言って、少しの間のあとで意外なことを口にする。
「峰岸恭二に直接交渉をする」
「峰岸恭二……。黄金騎士団の団長とお知り合い、なんですか?」
「知り合いも何も、あいつは俺の弟だ」
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