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「嘘じゃない、ですよねそれ……?」
「冗談で言っているように見えるか?」
「見えません。というより、大門さんの嘘を見抜けなかったら詐欺師も店じまいです」
言われてみれば、峰岸キョウジと大門ケンジ、下の名前を並べてみるといかにも兄弟らしい。
峰岸という苗字はきっと偽名なのだろうと察して、細山田は敢えて尋ねなかった。
「でもそれなら、最初からIFで峰岸恭二に話をつけたほうが―――」
「できねえ。訳あって疎遠でな。お互いに連絡先を知らねぇんだ」
「そうですか……」
細山田は一応納得して見せたものの、これだけ身近にいる兄弟がお互いに連絡先を知らないとは、いったいどういうことなのだろうかという疑念、いや、興味がやはり沸き立ってくる。
「なぜ疎遠なのか詮索するつもりはありませんが、不仲なら、こちらの要求を呑んでくれる可能性は薄くないですか?」
「いや、あいつは俺の言うことを必ず聞いてくれる。それは間違いねえんだ……。だがそれはしたくねえ。あいつの知らないうちに坊主たちを奪還するのが理想だ」
「『必ず』、ですか。失礼ですが大門さん、その理由を私にも教えていただけませんか? こちらも命を張るんです。根拠もなしに峰岸恭二を信用するわけにはいきません」
などとそれらしいこと言っている細山田だったが、もちろん興味本位が半分以上だった。
「そう、だな……そうだよな……。まあ大した話じゃあ、いや、大した話か。―――これは俺たちが牢屋にぶちこまれることになったある事件に関係してるんだが」
どこまでも根が真面目な大門は、まんまと細山田に乗せられて語り始める。
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