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それで恭二の気が少しでも紛れてくれれば、などと思いながら玄関口まで来たそのときだった……。
健二が、目の前で何が起こっているのかを理解するには、相応の時間が必要だった。
というより、理解したうえで、理解しがたい。
玄関のドアの前に、男が一人立っていたのだ。
いや、ドアの前に立っているというよりは、ドアそのものに張り付いていると言うべきだろうか。
その男は執拗にドアに体をこすり付けながら何やらぶつぶつと呟き、時に喘ぐようにして声を上げる。
「あんた、そこで一体なにをしている……」
健二の問いかけが聞こえてか聞こえずか、男はそれを止めようとしない。
よくよく見てみると、男の腰からは解けたベルトがだらしなく垂れ下がり、ズボンがずり下がって尻の半分を露出したような恰好になっていることに気が付く。
そんな状態で、腰の辺りを執拗にドアにこすり付けているその異様さには、流石の健二も続く言葉を失う。
異常者。
それ以外の言葉が見つかるわけがない。
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