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「キョウ、警察に連絡だ! いそげ!!」
なおも暴れる男に手を焼きながら健二が叫ぶ。
「ああ、そうだな」
背後で恭二がそう返事をしたのが聞こえた。
バタバタと動く男の手足を抑えることに必死になっていた健二。
だから、当然、気付くのが遅すぎた。
男が急に大人しくなってしまったことに驚いて、健二がやっと顔をあげたときにはすでに、男の首元にはジャックナイフが深々と突き刺さっており、噴出した鮮血が雨のように健二の顔へと降り注いでいた。
「キョウ……お前……」
目を剥く健二をよそに、恭二はその首から引き抜いたナイフを逆手にもちかえて、男の顔面に振り下ろし始める。
幾度も幾度も振り下ろしては、男の顔中にまんべんなく風穴をあけていく恭二。
まるで魚でもさばいているかのように、至って無機質な瞳をしている恭二の表情にぞっとして、健二は言葉を失っていた。
突き刺さるたびに男の体がわずかに跳ねていたが、やがてなんの反応も見せなくなると、恭二はやっと正気に戻ったのか、返り血で汚れきった顔を健二のほうへと向けた。
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