1446人が本棚に入れています
本棚に追加
「私たち、どうなるのかな……」
真由美の凄惨な姿を見た少女が、怯えてぽつりと零す。
真由美を囲んでいる少年少女の多くは孤児だった。
改変当時に家族を失った彼らの世話をしていたのは真由美を含めた希望の村の大人たちだったわけだが、世話役を買って出ていた者の多くは盗賊の襲撃によって殺されている。
彼らにとって真由美は最後の希望であり、ここで真由美が命を落とせばなんの拠り所もありはしない。
「大丈夫。若葉ちゃんがきっと、他の村に知らせてくれているわ」
真由美が優しげにそう言って子供たちを引き寄せる。
一方で真由美の心中は穏やかではなかった。
まさか、盗賊を操っていたのがトーイズの支配ギルドALL FOR ONEであったとは。
若葉が脱出に成功して誰かに保護された今、希望の村の襲撃が世に知れたはずなのだが、盗賊たちが慌てる様子はない。
となればおそらく、盗賊団とALL FOR ONEの繋がりに関しては露呈していないのだろう。
盗賊たちは痕跡を残すことなく、希望の村からトーイズへと、上手く逃げおおせたというわけだ。
ともすれば、盗賊たちが現状に飽きてしまえば、希望の村の生き残りの全員を、口封じのために始末してしまうことだろう。
そういった懸念が頭の中にあり、真由美も少なからず焦っていた。
実際には、ALL FOR ONEと盗賊団の繋がりについては既に岩城正義の知るところとなっているうえに、藤原もそれに気が付いている。
もし真由美がそのことを知ったら、きっとさらに焦ることだろう。
それならなぜ、盗賊たちは安穏としているのだろうか、と。
最初のコメントを投稿しよう!