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「どうかしら。子供の頃はアイスクリームが大好きでしたけれど……」
「いいですねえ。美砂ちゃんってこう、勝気なところがあるのにアイスクリームなんて! ギャップがイイですね。他にはどんな食べ物が好きなんですか?」
藤原は上機嫌で美砂の好物や趣味、休日の過ごし方などを尋ねてきたが、真由美は度々言葉に詰まった。
思えば美砂が中学に入って自立し始めたころからのことをよく知らなかったのだな、と。
適当に取り繕って答えはしたが、今の美砂ならそれらの質問にどう答えるのだろうかと思うと、途端に会いたい気持ちが焦りとなって膨らみそうになったが、真由美はなんとかそれを堪える。
ひとしきり質問に答えてやると、藤原は満足気に頷き、あるいは身をよじって気味悪く悶えていた。
「私もいくつか質問してもいいかしら」
真由美が唐突に言うと、藤原は「なんでもどうぞ」と歯切れよく言って身を乗り出す。
「あなたはALL FOR ONEの幹部か何かなのかしら?」
「幹部、というか、僕がここのトップです。出世したもんでしょう? 今の僕なら、きっと美砂ちゃんもいっそうメロメロになってくれるはずです」
まさか、この下種な男がトーイズを総べていたなどとはにわかには信じ難かったが、ギルド本部の最上階でこうしてお茶をすすっているのだから、おそらく間違いないのだろう。
「じゃあ、希望の村を襲うように指示したのはあなたなのね」
「ええ、そうですよ。でもまさかお母さんがあの村にいらしたとは。知っていればお母さんだけでも一足先にこちらにお招きして、丁重なおもてなしをしていたのですが、すみません」
村を襲ったこと自体については、どうやら悪びれる気がないらしい。
いまさら真由美がそれに心を乱すことはなかったが、やはり嫌悪感が顔にでてしまいそうにはなる。
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