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「ただ一つ、不安なことがありましてねぇ。いや実は、身内から裏切り者がでてしまいまして。逃亡した彼らはこの村のどこかに潜伏しているようなのですが、それがどうにも見当たらない。彼らが余計なことして、トーイズの住民が僕たちに疑念を抱くようになっては困るわけです」
そう、全てを計画通りに進めていた藤原であったが、唯一、大門と細山田を取り逃がしたことは計算外だった。
藤原の直属の手下どもが今もなお二人の行方を追っているのだが、やはり発見には至っていない。
「でも大丈夫です、黄金騎士団が裏切り者たちを匿っていたと思われる一味を拿捕したという報告が入っていますので、そろそろ居場所を吐かせているころでしょう。どうぞ、ご安心ください」
脳内で美砂と付き合っているらしい藤原は、真由美が自分を応援して、あるいは心配して話をしてくれているのだと勘違いをしているようだった。
当然気持ちは悪かったが、上手くすればもっと情報を引き出せるかもしれないと、真由美は努めて笑顔を造った。
「と、失礼」
ノックの音が聞こえると、藤原は立ち上がって部屋の入口まで進む。
扉の隙間から顔を覗かせていた手下としばらく話していたようだったが、やがて紙切れの一枚をもって戻ってきた。
「やあ、早速収穫があったようです。やっぱり、運命ってあるものなんですねぇ」
やけに楽しげに報告書らしき紙切れを眺めてそう呟く藤原。
「何かいいことがあったんですか?」
真由美がなるべく優しい声色で尋ねる。
「いやね、黄金騎士団からの報告が遅いもので、拿捕された連中の情報をこちらで調べさせていたのですが―――」
藤原はこみ上げる笑いをこらえながら、報告書をテーブルの上に置いて見せる。
そして、真由美の視線は、そこにずらりと並んだ顔写真の内の2枚に釘づけにされてしまった。
当然、張り付けていた笑顔は絶望に歪み始める。
「美砂……? めぐちゃん……?」
「んー!! ほんと美砂ちゃんは可愛いなあ!! 待ちきれなくて僕を探しに来てくれていたんだねっ!」
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