鼓膜の記憶①

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温い空気に落ちてきた雫は、どこか懐かしくて何か豊かな物を予感させる。 彼女の肌はそんな雨の匂いがした。 あの冷たい肌に熱がこもると、そうなる事に気づいた頃に僕は彼女に溺れ始めていたのかもしれない。   僕は彼女に抱かれている時、僅かに漂うその香りに我を忘れる。 男なのに「抱かれる」という表現はいただけない物かも知れないけれど、彼女と寝ている時、僕はそんな気分になる。 .
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