第1話

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六階へ下りる途中の踊り場のベンチでは、子供たちがポータブルタイプのゲームをしていた。 「お、楽しそう。……今ではもう家でゲームをする時代じゃなくなってきてるのかなぁ」 その子供たちを見ながら階段を下りていると、瞬間、足の接地感が無くなった。 「あ、やば! うわぁ!」 踏み外したのに気づいた時は既に遅く、そのまま瑞穂の体は踊り場まで転げ落ちた。 「痛ったー。お腹打っちゃったみたい。……って、あれ!」 瑞穂は目を開けると、そこには奇妙な光景が広がっていた。先ほどまで明るく賑わっていた店内は、一瞬にして真っ暗で誰も居なくなってしまっていた。 「……うそ、何で? 閉店時間? 誰か、いませんかー?」 瑞穂の声が不気味に反響すると、そのまま暗闇に呑みこまれていった。誰もいそうにないので、そのまま階段を下り五階を目指す事にした。 「まったく、私が倒れてる事に誰も気付かなかったのかな? て、あ、あれ!? 扉閉まってるじゃん。うそー!」 五階への階段を下りる途中、踊り場からフロアの方を見下ろすと、防火扉が閉じていているのが見えた。 「ってことはエレベーターからじゃないと無理じゃん。めんどくさいなー」 防火扉を恨むように睨みつけ、階段を上り六階へと戻った。エレベーターを目指し歩いていると、どこからか声が聞こえた。 --先生、どうかお願いします。 「え、誰? 誰かいるんですかー?」 瑞穂はその声の方へ行き色んな場所を捜してみたが、人がいるどころか気配すらしなかった。 「まさか幻聴? あまりの静けさに耳がおかしくなっちゃったのかな。早くここから出なきゃ……」 人捜しを諦めて、エレベーターを目指す。歩き始めてすぐ、また人の気配を感じた。そちらに目をやると、そこには小学一、二年生くらいの女の子が立ちすくんでいた。 「あ、あなた何してるの? お母さんは? お父さんと来たのかな?」 瑞穂が何を聞いても、女の子は口を開かない。それどころか、どこか遠くを見つめたまま全く反応しない。 「……この子、どこかで見た事ある。近所の子だったかなあ? 思い出せないけど、絶対に見た事ある。 それにしても困ったな。ここに置いて行くわけにもいかないし。うーん……ねえちょっと」
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