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瑞穂が女の子の体に触れると、体をビクッと縮こませその場に崩れる様に倒れ込んでしまった。そして尻もちをついたまま、またどこか一点を見つめるだけで動かなくなってしまった。
「おーい。お姉ちゃん行くけど、一緒に行く? ……何とか言ってよー」
それから何度か女の子をつついたり喋りかけたりしたが、結局何の反応も無かった。
このまま放っておくわけにもいかないので、瑞穂は女の子を立たせようとした。が、女の子は全身の力が抜けきっており、立たせようとしてもすぐに膝から崩れてしまう。腕にも力が入っておらず、まるで人形を扱っている様な錯覚に陥ってしまう。
「この子、もしかして全身麻痺してるんじゃ? 一体何があったのかしら。まあ、何があったかは分からないけど、仕方がない」
瑞穂は持っていたバッグを肩にかけると、女の子をおんぶした。女の子は想像していたよりも遥かに軽く、まるで赤ちゃんをおんぶしているのではないか? と思うほどに軽かった。
エレベーターまで来ると、瑞穂は目を丸くした。エレベーターの下方に、見た事のない妙な扉が腰を据えていたのだ。
「ちょっと、何よこれ」
その扉はとても大きく、横幅はそうでもないのだが、高さは天井についてしまうのではないだろうか、と思える程に高い。そしてその扉には、布で目隠しをしている美しい女性の彫刻が施されてあった。
「何だろうこれ。何かのイベントのモニュメントかな?」
その扉は、瑞穂が軽く触れるだけで開き始めた。と、途端にその隙間からものすごい量の光が溢れてきた。
「う、うわぁ! あ……ああ、閉じちゃった」
扉は音も無く閉じてしまった。突然の出来事に、触れていた手をとっさに離してしまったのだ。瑞穂は一度エレベーターを上がり、女の子をエレベーターの手前に寝かせた。
「何だかこうして見てみると、本当に人形みたい。……生きてるのかな?」
女の子はまばたきはするものの、胸に耳を当てても心音が聞こえなかった。
「……。き、きっと、心音が弱いだけよね。子供の心音って聞こえ辛いって言うし」
女の子の頬をそっと撫でると、再び扉の前へ立った。そして扉に触れると、扉はゆっくりと眩い光を溢れさせながら開いた。
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