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「シーケンシャルシフトだろ」
「パドルシフトがいい」
「漢ならH型っしょ、やっぱ」
放課後の教室、黒のランドセル2つ、赤のランドセル一つを適当に並べて下校時間まで車のことについて毎日語り合った。
「シンヤはどんな車に乗りたいんだ?」
短髪黒髪に半袖短パンの下町小僧のシンヤは人差し指を鼻に当てる。
「俺はデッカイエンジンにドッカンターボ、太っといタイヤはかせてストレートで無敵な車に乗りてー」
「バッカみたい」
「そういうまなしは? どんな車に乗りてーんだよ?」
小林真志、これでマナシと読む。
一応女の子だ。
「私はランボールギーニの車高を極限まで下げることしか考えてない」
「いやもう、それ以上下がらないから!」
西日がゆっくりと傾いていく。
「私のことはどうでもいいの。リンは?」
2人の視線が僕に集中する。
山の色が完全に抜け落ちて、影のように漆黒に染まる。
「僕は…」
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