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 進駐官養成高校は期末試験と夏季総合運動会を終了し、夏休みへ向けての2週間を迎えた。いつもの年なら、この期間は試験勉強も競技の練習もない夏空をゆったりと滑走するような爽快(そうかい)な期間なのだが、今年は空気がまるで異なっていた。  何者かの銃撃により自分たちの仲間がひとり殺され、ひとり重症者が生まれてしまった。校内ではあちこちで暗い噂(うわさ)が乱れ飛び、生徒同士で疑いをかけあうようになった。エウロペ連合や氾(はん)帝国、アメリア共和国に秘密結社トリニティといった敵対勢力のスパイの侵入がまことしやかに確度の高い情報として流された。この世界ではスパイの存在を疑うような非皇民はいない。敵のスパイは悪魔のように恐れられている。  新たな襲撃を恐れ、単独行動をとる生徒はいなくなった。養成高校も食事や洗面所にいくときさえ2人以上で連携して動くようにという緊急の軍令を貼りだしている。
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