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クリニックにたどり着くと、私は併設されたエステティックサロンのエステティシャンに名前を呼ばれた。克也さんは口の形だけで「じゃああとで」と言う。
ここのスタッフが私の事を噂しているのを聞いたことがある。彼女たちは私がまだ、待合室にいるとは思っていなかったらしい。
「あの患者さんってすごいよね、彼氏のお金で好き放題美容にお金かけれるなんて」
「ビューティーコロシアムもびっくりだよね」
「次は何すると思います?」
「さあ? でもきりないよね、整形もエステも」
「でも流石にあの年でフェイスリフトとかはしないですよね」
「わかんないよ。こないだだって他の患者さんでいたじゃない、目の開き具合がおかしくなってるのに、ドクターに涙ながらに感謝してた人。美意識ってほんと人それぞれだわ」
「あの時の、ドクターの顔!」
「ドクターだけじゃないよ。私たちだってどんな顔して良いのかわかんなかったじゃない」
何も知らない第三者からは目の開き方がおかしくなってしまった患者と同列の場所に私はいるのだと思うと、ため息が出た。
心から望んでここに来ているわけではないのに。
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