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エステで受けるマッサージはレーザーや注射針と違って、私に優しい。顔に当てられたスチームにぼうっとなり、眠ってしまった。この時間の間に克也さんがまた何か思いついたりしませんように。と思いながら。
栄養を補給されて、つやつやとした、肌にファンデーションを塗るのは、いつも、もったいない気がするけれど、これから克也さんと出かけるから、すっぴんのままというわけにもいかず、パウダールームで手早くメイクを終らせて待合室に向かうと、少しも待ちくたびれた様子のない克也さんが立ち上がった。私の顔をしげしげと覗き込む。
「うん。綺麗になった」
「克也さん、そんなに変わらないって」
私たちのそんなやり取りを見て、受付の女の子が微笑んでいる。その腕には、私のタウンページみたいな厚みのカルテが抱えられていた。
クリニックを出ようと、彼の腕を取ると、反対の手に握られた物が視界に入って、私の背筋が凍った。
あのパンフレットは確か……。
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