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パンフレットが見えないふりをして、沈黙を守り続けていたけれど、その日、夕食の後、さりげなく、克也さんは私の目の前でそれをめくりはじめた。
「ルリ、これどう?」
「どうって?」
「ルリの胸、もう少し大きくてもいいんじゃない?」
「……」
「ヒアルロン酸入れてみたら?」
克也さん、鼻だって最初はそう言ってたじゃない。
でも、結局シリコン入れたよ。二回も入れなおした。顎だって最初はそうで、シリコン入れたけど、なんかやっぱ違うって、除去手術うけたじゃない。それに、胸は……。
「胸は、にゅう……」
そこまで、言いかけて、どうしても言えなくて、パニックになりかけた私は、財布だけ掴んで、マンションを飛び出した。
タクシーに乗り込んで、克也さん以外で、唯一、私の最初の顔も、今の顔も知っている、幼馴染の梨絵のアパートに向かった。
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