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「この荷物、何?」
沈黙が痛くて耳鳴りがしそうだったけれど、私は答えた。
「出て行こうと思って」
「なんで?」
「修ちゃんと別れようと思って」
「そんな風に、俺のパジャマ握り締めてるのに、別れたいの?」
私は手元のパジャマを見て自分の習慣に舌打ちしそうになりながら、パジャマをベッドの隅に置いた。
「朝、様子が変だったから心配してたんだ。香奈は子どもが嫌いなのか? 妊娠するのが怖いのか?」
「そういうのじゃないの」
「妊娠はしてなかったんだろう? その辺に箱が転がってたけど」
「うん。してなかった」
「訳が分からない。香奈は俺の事好きなんだよな? 俺、浮気とかしてないよ。出張とか仕事であるけど。なんか誤解してるんだったら、ちゃんと話してくれよ。絶対単なる疑心暗鬼だから」
むしろ、浮気を何度も繰り返してくれたら良かったのに。なんて言ったら修ちゃんはどうするんだろう。
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