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もし、そうだとしたら……。
私の守り続けていた世界が破綻してしまう。カタカタと小刻みに手が震え始めて、私は自分の手をきつく握りしめた。
「大丈夫だよ」
「そうか? 香奈がそういうなら、違うのかな」
修ちゃんは残念そうにそう言って、夕飯を食べ終えると、お風呂に入り始めた。
バスルームで鼻歌が聞こえ始めてから、バッグの中にあるピルケースを取り出して、薬を飲み込んで深呼吸する。
そして手帳を取り出して前回の生理の日につけている赤いマルを確認して数を数える。
五日か、六日遅れている。どうして気づかなかったんだろう。
避妊をしていたからすっかり安心していた。
私の子宮なんかに、修ちゃんの子どもがいるの?
どうしよう?
医者に聞かないと分からないけど、私が大量に飲んでいる薬は胎児に影響はないんだろうか?
全くないわけではないはずだ。だって、煙草やお酒でさえ、パッケージの脇に注意書きが書いてあるのに、常にこんな薬を飲んでいる女のお腹にいて、何の影響も受けないわけないと思う。
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