眼差しの音
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「梨絵、おかえり。あっ!」 一つ上の兄の司が、小さく悲鳴をあげた。 彼の視線の先には、私の身体から離れようとしている温い血液が、太ももを伝い、かかとまで落ちていた。 保健室の先生から聞いていたのとも、母親から聞いていたのとも、違うと思った。 この時以上に、あの赤が、脳裏にこびりついてしまうくらい、鮮明に感じたことはない。 .
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