眼差しの音

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和臣と、ラブホテルで別れてから、電車に乗る。 ガタンゴトンというお決まりのリズムが、セックスで得た余韻を長引かせてくれる。 ある一定のリズム。 これって、とっても心地いい。自宅の最寄り駅に着いた瞬間に余韻は消えうせた。ウンザリするくらい、長い坂道を登り、自宅に向かう。 「坂の上からの眺めが最高ですよ」 そう不動産屋に言われて借りた部屋は、自分が住んでいるマンションに、行きも帰りも見下ろされる。 という可能性が臭わされていたと、引っ越してから気がついて、街路樹が綺麗に並ぶ坂道も3日もすれば憎たらしくなったけど、履いているハイヒールの踵が、以前よりも早く磨り減ってしまう事に気づいた頃には、その憎らしさも、諦めに変わった。 .
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