眼差しの音

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罪に色があるとしたら、こんな色のような気がする。 そう思って大量に買い込んである封筒だ。宛先はいつも同じ。 差出人は書かない。 ――どこから、やり直したらいい? どこからなら、俺たちはやり直せるんだろう?――   彼が私に言った最後の言葉を、いつも思い出す。   分かんない。 分かんないよ。 それに、やり直したいかどうかも、分かんないよ。   丁寧に封をしたそれを、私は翌朝、ゴミ箱に入れるみたいに、コンビニの郵便ポストに無造作に落とした。 .
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