第1話

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モトムラの顔は赤くなり始めていた。 それでもまだ頭ははっきりしていたから、言いたいことはわかる。 隣の男の言う通りだった。 改めて自覚させられた事で自分自身に怒りがわいた。 モトムラが自分自身を叱咤するような言葉が口から出そうになると男が先に口を挟んだ。 「わかってるならいいんだ。言葉に出すな。態度で示せ。これ以上頑張る自分を貶すな」 その言葉で少し気分の晴れたモトムラはジョッキから手を離した。 「……今日はもう帰ります。おじさんありがとう」 「いや、せっかくの酒に説教じみて悪かったな」 男は手元のグラスに目を落としてカランと揺らした。 「マスター、代金置いとくよ。おじさん、またどこかで」 モトムラの言葉に男は手を上げて答えるだけだった。 その日の帰路は火照った身体を冷ますのにちょうどいい温度だった。
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