3人が本棚に入れています
本棚に追加
坂道を自転車で下る。家から高校までは約三キロ。
始業が八時三十分なので家を八時十五分に出れば十分に間に合う。
友人や家族からは「慎重すぎる」との指摘を受けることが多々あるぐらいなので僕はいつも遅刻を恐れて八時には家を出ている。
この日も七時五十分に家を出て時間には余裕がある。
いつも通り、やたら長い上り坂にさしかかったとき、ふと先を歩く女子の姿が見えた。あの肩にかかる程度のショートヘアーの後姿には見覚えがあった。
彼女とかかわると面倒なことになる。触らぬ神に祟りなしだ。とっとと抜かしてしまおう。
そう判断して自転車の速度を上げる。
あと少しで抜き去れるというときであった。
突然一陣の風が走りその女子のスカートを微妙にめくりあげた。
女子はスカートを押さえはしたがその時には風はやんでいた。
ほんの一瞬だが白がみえた気がした。
そのとき彼女は振り返った。あわてて目をそらし彼女を抜き去る。
「こらぁぁっ!止まりなさい、そこの変態っ!」
後ろから声が追いかけてくるが止まれと言われて止まるバカはいない。
後が怖いが今は逃げるのが最善手であることは間違いない。
最初のコメントを投稿しよう!