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「止まれって、言ってんでしょうがぁぁ!」
だから止まるわけないでしょ。
ため息をつきながら、僕はそのまま学校への行路を急いだ。
急いだとは言え上り坂だ。
運動不足気味の僕ではそれほど速く進むことはできない。
恐る恐る後ろを振り返ると少女が追いかけてきているではないか。
彼我の距離はおよそ10m。上り坂はまだ40mほど続く。
危機感にとらわれてペダルにさらに力を込める。
それでも差は縮まっていく。上り坂はあと20m...10m...。
そして強い衝撃がきて前のめりになる。
……追いつかれたようだ。
あと5mほどで再び下り坂になったのに。
後ろを振り返ると少女は自転車の荷台をつかんでいた。
仕方なく自転車からおりる。
「……あんた今見たでしょ?」
「……何をでしょうか?」
正直に答えるわけがない。
それにこいつも証拠がないのに暴力に訴えたりはしないだろう。
「なんでさっきは目をそらして逃げだしたの?」
「……危険を感じたから」
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