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見えたからとは死んでも答えるものか。
「なんで危険を感じるのよっ!疾しいことがあるからでしょ!」
後頭部に彼女の鞄が凄い勢いでぶつけられ、よろめく。
……不可抗力なのに理不尽だ。
―*―
こいつは姫川葵(ひめかわ あおい)。幼稚園以前からの腐れ縁のある幼馴染だ。
身長162cm、やや痩せ気味。遠目でも可愛いとわかる、十分以上に整った顔立ちにスポーツ万能となかなか男子に人気のある女子である。
性格の方も腐れ縁の僕以外には別段凶暴なわけでもなくむしろ優しいと言ってもいいぐらい。
欠点らしきものがあるとすれば、主に勉学であろう。
葵は驚くほどに頭が残念だ。
以前に試験で二回連続学年最下位を叩き出したりもしたぐらいだ。
「いってぇなあ。人の頭をそんな見るからに重そうな鞄で殴るか、普通?」
無駄と知りつつも抗議をせずにはいられない。それにさっきのは完全に不可抗力だ。
「相変わらず朝から五月蠅いわね。ご近所様の迷惑考えなさいよ」
「お前が言うな。どう考えても、近所迷惑はお前だ」
「あんたが変態だから悪いんでしょうがっ!」
「お前が白のパンツはいていようが僕の知ったことかっ!」
言ってしまってから致命的なミスに気付いた。だがもう遅い。
葵の頬がみるみる朱に染まっていく。
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