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「もう良い、良いんだエティア」
障子の向こう側の縁側に座って、苦しそうに言うカンナの言葉に、エティアは目を閉じた。
私の命があと僅かだということを、とうとう知ってしまったのね。
一番知られたく無かった人。
知られてしまったのなら隠しようもないし、きっと誤魔化しも効かない。
エティアが障子を開けて部屋に入ってきたカンナを見上げると、彼の肩越しに星空と月が見えた。
屋敷に着いた時はまだ夕暮れだったので、部屋に辿り着いたのと同時に気を失ってからかなりの時間が経っていたことを、今更ながら知った。
夜の帳が降りた屋敷はひっそりと静まり返り、家人の動きの物音一つ聞こえてこないところをみると、正確な時刻は分からないまでも、真夜中なのが想像できた。
その間、ずっと彼は気が付かなかったことを一人責めていたのだろうか?
バカね、それはあなたのせいでも何でもないのに。
「もう歌わなくて良いんだ」
頭を左右に振りながら言うカンナに、今で我慢していたモノが一気に爆発した。
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