第11章 君は桃

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俺は少し考えて手の動きを止めた。 ……部屋には二人きり。 逃げも隠れもできない、向き合うだけの関係。 俺は正直に答えた。 「……俺も男だからエッチな気分にはなるかも。でも必死で貞操は守るよ」 「男子も貞操って言うの?なんか疑わしい」 「ねー?俺って信用ない?結構一途なんだけどな」 「……」 なんとなく停滞した空気を感じて、足元にまとまっていたベッドのかけ布団を自分たちの体にかけた。 「傷つけて別れて後悔したから、もう泣かさないよ」 「うん……」 ふくらみを愛でていた手を髪に移動し、小さな子にするように優しくさらっとなでた。 ……彼女は特別。 ひとめぼれだったような、知るたびにどんどん好きになったような、今となってはよくわからないけど、自分にとって大切な存在であることになぜか確信があった。 色んな女の子に興味ある、モテたら嬉しい、あわよくばエッチしたい、男のサガとしてそれも普通のことなのかも知れない。 でもいい加減な男は彼女を手に入れることはできない、絶対に。
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