第11章 君は桃

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それを眺める一般庶民の彼女はと言えば、画面が見えるようにナナメに頭の位置をずらして枕を横抱きにしている。 コアラみたいな動物にも見えて、リラックスした姿にくっつきたくなった。 その枕の位置に俺が入りたいなあと考える。 「うーん……顔はね」 「見かけしかわかんないよね、だって女優さんだもん」 「でもいい人のフリしてんのかなって気もする」 「そうかなー?アキラのタイプじゃない?」 「俺はリコちゃんがタイプ!」 他の女の人を見て俺が何か思うと予想したのか、何度も感想を求めてくるけど、美人な女優なんていっぱいいるし珍しくはない、俺にとっては追求してくる彼女の方がいじらしくてたまらない気持ちになるのに。 フフッと自分で言ったことに満足して、どさくさにまぎれて抱きついた。 背後から彼女の首元に鼻先を埋めると、今すぐ自分の欲望をつっこみたくなるほどいいにおい。 あー。たまらん。
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